【社労士解説】退職するとき有給で大損してるかも?最大60日分の消化も可能!
余裕をもった転職、急な退職と人それぞれの辞め方がありますが、どんな退職にしろ有給休暇はしっかり消化して退職しましょう。
勤続年数や退職時期によっては60日分(約3カ月)近く休養しつつ給与がもらえます。
退職処理を何百人とおこなってきた実務経験上、もったいない辞め方するなぁと思う人は意外と多いです。
退職したい気持ちが優先で、他のことは後回しって人もいるかもしれませんが、有給を無駄にする理由はなに1つないのでしっかり消化しましょう。
この記事では、退職したい労働者側の視点で年次有給休暇の知っておくべきポイントを解説していきます。
退職のときこそ余裕をもった対応が必要
退職時の有給で大きな差
退職を決めたときにまず確認すべきことは、年次有給休暇の付与日です。
有給の付与日を気にしないで退職をする人が意外に多く、気にする人とでは在職期間が長いほど金銭面で大きな差がでてきます。
社労士として退職処理をしていると、あと1か月在籍していれば有給20日発生するのにってケースが時たまあります。
在籍期間にもよりますが、有給消化しながら付与日の追加分も消化すればそれだけで最大60日の休暇です。(非常にもったいない)
『今すぐ退職したい』って気持ちもあるかもしれませんが、そんなケースでも有給残日数などはしっかり確認してきましょう。
有給の差で退職後のゆとりが全然違うから大切
有給の『付与時期』
まずは、自身の年次有給休暇がいつ発生するのか確認しましょう。
原則をふまえて、会社それぞれでルールを定めているので確認しておく必要があります。
- 入社月の半年後の月
- 4月入社の場合、10月
- 会社規定で定められた月
- 入社月関係なく、4月に一斉付与
※以後、付与日は固定
中途採用が多い会社の場合、それぞれの入社月を基準にすることが多いです。一方、定期採用が一般的な会社は、有給付与日を統一する②の方が多いです。
正社員(フルタイム)の場合
その他(アルバイト等)の場合
引用:厚生労働省|『有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』
まずは、自分の会社がどのように有給を付与されるのか就業規則で確認する必要があります。
付与時期と日数を知ることで退職目安を決められる
有給付与日『目前で退職』
労基法の原則で考えれば、有給の上限を『40日』としている会社が大半です。
でも、有給の上限は実質60日なんです。
有給消化中に付与日が重なる場合、あらたな有給が上乗せされます。ポイントは上乗せ分も想定して退職日を決めることです。(この後、具体例を解説します)
付与日をかぶさることで新たな有給も消化可能ですが、追加分を頭に入れていない人が意外に多いです。
知っていないと大きな損が発生するよ!
なぜなら、有給は労働者側からの申請によって消化することが原則だから。
その原則を知っている会社がわざわざ『有給がまた付与されたけど消化する?』と教えてくれるホワイトな会社は少ないので、自分で付与月を把握した退職がとても重要になります。
- 入社歴6年6カ月以上
- 年間出勤日数が8割以上
- 付与日まで2カ月程度の人
※付与日まで1カ月切っていると付与分が上限40日を超えるので消滅分が発生
この条件をあくまで60日になるケースです。在籍期間が短くても、有給消化中に付与されればその分も含めて消化可能です。
このときの注意点がこちら
付与日に有給残が21日以上あると、追加分と含めたときに40日を超えた分は消滅します。(在籍期間が6年半以上の場合に起こる)
・有給付与日 有給残30日
・有給付与日数 20日
30日+20日=50日
50日-上限40=10日消滅
細かな話ですが、余裕をもった退職を計画しているのなら意識しておきましょう。
週5日の勤務の場合、労働日数は毎月20日程度になります。有給消化が付与日と重なれば、実質3カ月分の給与と休暇を得られることになります。
勤続年数が長いほど有給の恩恵でかいんでチェックしときましょう
筆者のケースで『退職』
有給の理屈を踏まえて、筆者の退職タイミングを例にあげました。
まず重要なのが付与日です。付与日に有給残が1日でも残っていれば追加分も消化できます。
追加分の有給も想定して、筆者の場合は『10月31日』がもっともベストな退職日です。
この3か月間、休もうが転職活動するかは自由です。その後も、待期期間はありますが失業手当も受給できます。
こんな感じで有給を上手く利用することで、心にゆとりをもった転職や休養ができます。
ですが、この間も社会保険料が発生するので会社にとっては嫌な目で見られるので別の方法も解説していきます。
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有給消化が難しい場合は『買取交渉』
原則、有給の買い上げは許されていません。
ですが、有給の買い上げが許されるケースもあります。
- 時効消滅する有給
- 退職時に残っている有給分
- 法律以上に与えられた有給分
そんなときは、有給の買取交渉をしてみましょう。
言いづらいかもですが、有給のちょっとしたルールと決め文句で意外と簡単に交渉可能です。
退職するんだから堂々と交渉すべき
有給の『円満な買取交渉』
一番手っ取り早いのが、退職日まできっちり働く代わりに『有給分を給与として支給』してもうらことです。
引継ぎ、引き延ばしと、退職日ギリギりまで働く状況は十分に考えられます。そんなときは有給を諦めるのではなく買取交渉しましょう。
- 買取可能なだけ(義務ではない)
- 断られたらスパッと有給消化
- だと困る会社に事前に買取交渉をする(あくまで円満に)
有給ルールを知っている会社ほど、現場に穴があくより買取の方がよっぽどいいと割り切ります。
意外と対応してくれる会社も多いです。筆者の勤務先でも現場状況によっては対応しています。
『買取を断る会社=有給消化はあきらめろ』になりがちですが、スパッと消化に切り替えるか退職日を伸ばしてでも使い切りましょう。
『有給の買取はできないんだよね』なんていう事務担当は、完全に無視してOKです。
有給買取は当然の権利!
のんびり『消化できない時』
一方、のんびり有給消化してられないケースもあります。
- 引継ぎで有給消化できない
- 人手不足で退職ギリギリまで働く
- 転職先にすぐに来て欲しいと言われている
転職するとき有給を使えないイメージを持っている人も多いですが、法的には全然問題ありません。ただし、転職先が二重就労を禁止している場合は就業規則違反になりかねません。
急いで勤務してほしい場合は、理解を示してれる会社も多いです。
なぜなら副業が当たり前になりつつある時代に、前職で有給消化しつつ新しい会社に就職してはいけないというルールはありません。
筆者の場合、仮に前職で有給消化中と言われても『そうですか、じゃ前職の退職がすんだら保険加入手続きしますね』で終わります。
なぜだか有休消化中に働き出したらダメなイメージを持っている人が多いですが、たかだか1~2カ月程度在籍が重なるだけです。
よほど厳格な会社でないかぎり前職の有給消化は理解してくれるでしょう。
二重就労の許可がでなそうなら、堂々と有給買上交渉してください。
交渉を上手く進める『決め文句』
よほどブラックな会社か法律を知らない担当でない限り、この決め文句で一発逆転できるはずです。
この一言で、有給の買取交渉は終了するはずです。
有給に対する罰則は地味に重たいので、そもそも知っている担当者ならビッグワードの『労基署』を出す前に話は聞いてくれるでしょう。
でも、労基署へ相談されたらどうなるのか事の重大さを把握できない無知な担当者もいるのは事実です。
有給の買取交渉が上手くいかない場合は、退職日を伸ばすか労基署へ相談するといった話し合いをしましょう。
働く側が、退職時に有給を無駄にする理由は何一つありません!
有給の意外と知らないルール
有給は2年で消滅
有給の上限を40日としている会社がほとんどです。
勤続年数が6年6カ月以降は、毎年20日付与となるので全く有給消化しない場合
- 20日消滅
- 20日増える
- 結果、40日のまま
こんなサラリーマンがほとんどだと思います。有給を使うことなく無駄にしては、また増えるの繰り返しです。
有給の『消化義務』
消化されない有給が問題視され、法律では少しづつ厳しく定めるようになりました。働く側が知っておくべきポイントをあげておきます。
- 年間5日以上の消化義務
- 時間単位での有給消化が可能
年間5日の消化義務
年間10日以上の有給が付与される労働者には、5日間必ず消化させる義務が設けられています。
5日以上休ませなかった社員×30万円以下という罰則は会社にとってかなりの痛手です。
すぐさまこのような罰則が適用されるわけではないですが、会社からしたら絶対に守っていくべきルールです。
少しづつですが、働く側も有給申請しやすい世の中にむかっています。
時間単位の有給消化
時間単位で消化させるかは会社の任意となっていますが、少しでも有給消化率を高めるためにも時間単位で定めている会社も増えてきました。
細かなルールはありますが、働く側はそこまで知る必要はありません。
フレックス感覚で、午前休・午後休に使う形で有給消化が可能です。(会社が定めている場合)
丸々1日はとりづらいなら、有給が時効消滅する前にせめて時間単位で消化していきましょう。
午前・午後てtだけならハードルも低く、申請しやすい!
有給は誰でも付与される
正社員、学生、主婦、アルバイト、パート、派遣社員、それぞれ立場がありますが有給において雇用形態は関係ありません。
たとえばアルバイトで、週1の勤務であっても有給は発生します。
有給の考え方は、あくまでどのくらい働いたかで判断されるので、学生とかそんなことは関係ありません。
言い換えれば有給はポイ活のようなもので、少ない日数や時間であったとしても働いた以上は有給の計算には反映されるのできっちり現金化しましょう。
ちなみに筆者は大学4年から社労士の勉強を開始していたので、アルバイトを辞めるタイミングでまとめて有給申請しました。
居酒屋のアルバイトでしたが、有給15日分たまっていて11万円分の給与として振り込まれました。(2009年当時)
今ではアウトですが、当時は本社から連絡があり『他のアルバイトには内緒』のお願いをされましたけど、もらうもんはもらうべきです。
『労働=有給付与』と思ってOK!
対応に不安があるなら【退職代行】
前提として、『退職は自分自身で行うべき』です。
ですが、会社によっては強引な引き留めや性格的に退職時の交渉が出来ない人もいます。なので、退職代行は否定しません。(弁護士や社労士の簡易版といったところです)
ここでは、退職交渉がしづらいことが予想される場合の選択肢をあげておきます。
表現が正しいかわからないけどUberEats感覚で退職できる、、、
言えないなら『退職代行』
とりあえず退職できればいい程度であれば、退職代行会社で十分です。(退職代行ができるのは意思を伝えて書類の手続き程度)
しかし在籍期間も長く有給もフルで溜まっているなら、ある程度の交渉権が必要となるので労働組合が運営する退職代行に依頼する必要があります。
人事・総務担当なら、退職代行が本人のかわりに交渉してはいけないことを知っています。退職代行も需要が高まってきて個人事業主レベルで参入する人も増えてきました。
退職代行を依頼する際はちゃんとした会社か確認して、余計なトラブルにならないように注意しましょう。
言葉で言いづらいならメールで伝えるのも手です
未払いなら『弁護士・社労士』
それ以上に未払残業代など大きな金額が発生しそうであれば、社労士や弁護士に相談をおすすめします。
社労士や弁護士であれば、なにが問題かを雇用契約書や給与明細からひも解いてくれます。
- 退職の意思表示
- 有給消化の依頼
- 退職時の細々した手続きや交渉
もし未払い残業代などがあるなら、有給消化ついでにしっかり請求しましょう。
過去3年間分まで請求できるから大きな金額になる可能性もあるよ!
費用なしの『メール』
最悪、メールで済ませましょう。(おすすめしませんが、、、)
退職代行や弁護士・社労士も費用が発生します。有給消化しつつ退職したい程度なら退職代行利用しなくともメールで伝えるのも1つの手です。
実務経験15年以上ですが、これまで退職代行から連絡が着たことがないですが、他人からの電話も本人からのメールもどっちもどっちと感じます。
むしろ直接やりとりが出来る分、本人からのメールの方がありがたく感じるかもしれません。
この記事を読むように、ある程度の調べる術を持っているのであれば自身でメールで伝えることも検討しましょう。(できたら口頭で交渉が手っ取り早いですが)
責任ある立場の人にはおすすめしません!
退職ときの有給『まとめ』
以上、退職するときの有給の使い方でした。
毎年付与される有給を、在職中にフル消化はなかなかできません。せめて、退職のときくらい有給を上手くつかってフル活用しましょう。
- 上限は実質60日ある
- 付与日を把握しておく
- 付与日の2カ月前から退職準備
- 有給消化中の付与分もしっかり消化
- 最後の付与日の時点で有給残を20日以下にしておく